ダイエットしてもなかなか痩せない、リバウンドを繰り返してしまう…そんな悩みを抱える方に朗報です。
肥満症治療薬「ゼップバウンド™」(一般名:チルゼパチド)が登場し、従来の治療を大きく変えようとしています。
持続性GIP/GLP-1受容体作動薬「ゼップバウンド®」複合的な要因からなる慢性疾患「肥満症」を適応症として国内製造販売承認を取得 | 田辺三菱製薬株式会社)
新たな肥満治療薬「ゼップバウンド」、米国の薬局で販売開始 | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン
ゼップバウンドは週1回の注射で体重を大幅に減少させることが可能な画期的な薬で、「これなら自分も痩せられるかもしれない」と希望を感じられる新たな選択肢です。
ここではその基本情報から作用メカニズム、効果や副作用、治療の流れまで、ゼップバウンドについて詳しく解説します。
ゼップバウンドの基本情報と日本での認可状況
ゼップバウンドは、もともと2型糖尿病治療薬「マンジャロ®」として使用されているチルゼパチドという注射薬を、肥満症患者向けに適応拡大したお薬です
2022年に米国で糖尿病治療薬として発売され、日本でも2023年4月にマンジャロが導入されました 。その高い体重減少効果に注目が集まり、2023年11月に米国FDAが肥満症治療薬としてゼップバウンド(tirzepatide)を承認し、翌12月より米国で販売が開始されています。
新たな肥満治療薬「ゼップバウンド」、米国の薬局で販売開始 | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)
日本でも臨床試験を経て2024年12月27日に「肥満症」の適応で厚生労働省の承認を取得し、2025年4月11日から発売開始となりました。
持続性GIP/GLP-1受容体作動薬「ゼップバウンド®」複合的な要因からなる慢性疾患「肥満症」を適応症として国内製造販売承認を取得 | 田辺三菱製薬株式会社
基本情報(ポイント):
- 薬の種類: GLP-1/GIP受容体作動薬(インクレチン関連薬)
- 作用: 食欲抑制・血糖コントロール(二重のホルモン作用で満腹感を高め摂取カロリーを減らす)
- 投与方法: 週1回の皮下注射(ペン型のオートインジェクター使用)
- 用量: 2.5mgから開始し、段階的に最大15mgまで増量可能(2.5・5・7.5・10・12.5・15mgの6段階)
- 開発: 米イーライリリー社(日本では日本イーライリリーと田辺三菱製薬が提携)
- 日本での承認条件: 「肥満症(※高血圧・脂質異常症・2型糖尿病のいずれかを合併)、かつ食事・運動療法で効果不十分なBMI27以上(肥満関連疾患を2つ以上有)またはBMI35以上の成人」に限定 (持続性GIP/GLP-1受容体作動薬「ゼップバウンド®」複合的な要因からなる慢性疾患「肥満症」を適応症として国内製造販売承認を取得 | 田辺三菱製薬株式会社)。詳細は後述します。
なお、日本で保険診療で使える肥満症治療薬は2023年に承認されたGLP-1受容体作動薬「ウゴービ®(セマグルチド)」に続き、このゼップバウンドが2例目となります。
従来の食欲抑制剤(サノレックス[マジンドール]等)や脂肪吸収阻害薬(オルリスタット)は効果が限定的でしたが、ゼップバウンドは平均15~20%もの大幅な減量効果が期待でき、肥満症治療において画期的な存在です。
他の肥満治療薬との比較 – GLP-1単独薬との違いは?
ゼップバウンドは既存の肥満治療薬と比べて何が優れているのでしょうか。現在、肥満症治療に用いられる主な薬剤とゼップバウンドの比較ポイントをまとめます。
- ウゴービ®(セマグルチド) – 週1回注射のGLP-1受容体作動薬: 2021年に米国FDA承認、日本でも2023年より使用可能 。平均体重減少は約**10~15%**と言われ、注射頻度は週1回です (SURMOUNT-5: Tirzepatide Bests Semaglutide in Head … – HCPLive)。ゼップバウンドと比較すると減量効果はやや劣ります(後述の直接比較試験でセマグルチド2.4mgは13.7%減量、チルゼパチド15mgは20.2%減量) (SURMOUNT-5: Tirzepatide Bests Semaglutide in Head … – HCPLive) (Lilly’s Zepbound® (tirzepatide) superior to Wegovy® (semaglutide …)。投与方法は似ていますが作用機序がGLP-1単独のため、後述するGIP作用はありません。
- サクセンダ®(リラグルチド) – 毎日注射のGLP-1受容体作動薬: 1日1回の皮下注射が必要で、平均体重減少は5~8%程度と報告されています(ウゴービより効果は低め)。日本では2017年承認済(適応は「肥満症」)ですが、毎日の自己注射の負担もあり普及は限定的でした。
- 食欲抑制剤(マジンドール等) – 中枢作用型: 食欲中枢に作用する経口薬です。日本ではサノレックス®(マジンドール)が承認されていますが、適応はBMI35以上の場合のみで、効果は5%前後の減量に留まります。また依存性や副作用(動悸、不眠など)のため長期使用は推奨されません。
- その他の治療: 食事・運動療法が基本で、それでも不十分な場合に上述の薬物治療を行います。重度の肥満症(BMIが高度に高い場合)には外科的治療(減量手術)も選択肢ですが、侵襲が大きいため一般的ではありません。ゼップバウンドほどの大幅減量(20%前後)が得られる内科的治療は、これまで減量手術以外にはありませんでした。
こうした比較からも、ゼップバウンドの優位性が見えてきます。GLP-1単独薬のウゴービでも有効な方は多いですが、ゼップバウンド(GIP/GLP-1二重作用)の方が相対的に約50%近く多い体重減少効果を示したとの報告があります (SURMOUNT-5: Tirzepatide Bests Semaglutide in Head … – HCPLive)。さらに一部報告では、消化器副作用もセマグルチド単独より少ない可能性が示唆されており (Comparative efficacy and safety of semaglutide 2.4 mg and …)、効果と安全性のバランスでも注目されています。ただし、ウゴービ等のGLP-1薬と同様に皮下注射が必要である点や、作用機序が重なるため併用はできない点には留意が必要です。
ゼップバウンドの作用メカニズム(GLP-1とGIPの二重作用)
人間の腸管から分泌されるホルモンインクレチンには、GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)とGIP(胃抑制ポリペプチド)の2種類があります。食事を摂るとこれらが分泌され、血糖値に応じてインスリン分泌を促したり、食欲を抑えたりする作用があります。ゼップバウンドはこの両方の受容体に作用する世界初の薬で、いわば
「2つのホルモンを1本で投与する」
ような働きをします。
DPP-4酵素で分解されにくい設計のため血中で長時間作用し、週1回注射が可能です。
GIP受容体とGLP-1受容体の両方を刺激することで、インスリン分泌・感受性を高め血糖を下げる、グルカゴン分泌を調整する、胃の排泄を遅らせ満腹感を持続させる、食欲を抑える…といった複合的効果を発揮します。
その結果、食事量が自然と減り、体脂肪が燃焼しやすいホルモン環境へ導くことで体重増加の抑制(減量)作用が得られます。
従来のGLP-1作動薬(例: セマグルチド)は主に食欲低下・満腹感の増強によって摂取カロリーを減らす作用が強く、インスリン分泌促進作用もありますが単独では限界がありました。一方、GIPは単独では肥満患者では作用が低下しているとの指摘もありましたが、GIPとGLP-1を同時に刺激することで相乗効果が得られることが臨床試験で明らかになりました。
つまり、GLP-1で食欲を抑えつつ、GIPでインスリン作用を高め代謝を促進することで、より大きな減量効果を引き出せるのです。
補足として、ゼップバウンドは天然のGIPに構造を似せて開発されつつ、GLP-1受容体にも結合できるよう改変された単一分子です。
体内で分解酵素DPP-4の作用を受けにくくし血中半減期を延ばしているため、週1回投与が可能になっています。
自己注射が不安な方もいらっしゃるかもしれませんが、専用のオートインジェクター(使い捨てのペン型注射器)で簡便に投与できるよう工夫されています。
臨床試験データと実際の減量効果
ゼップバウンドの効果は多数の臨床試験で検証され、その結果が国内外で報告されています。代表的な試験結果として、**グローバル試験(SURMOUNT-1)と日本人対象試験(SURMOUNT-J)**のデータを見てみましょう。
- SURMOUNT-1試験(国際第III相試験): 米国イェール大学のJastreboff医師らが中心となり実施された大規模研究で、肥満症患者約2,500人が参加しました。参加者は食事・運動療法+プラセボ群と、ゼップバウンド5mg・10mg・15mg各投与群に分けられ、72週間(約1年半)にわたり経過を比較されています。その結果、プラセボ群の体重変化は平均-3.1%にとどまったのに対し、ゼップバウンド5mg群で-15.0%、10mg群で-19.5%、15mg群では-20.9%もの体重減少が認められました。いずれの投与群も統計的に有意にプラセボを上回る減量効果が確認されており、約9割の患者が5%以上減量を達成しています。
このように、平均で体重の5分の1前後という大幅な減量効果は従来薬を大きく凌ぐものでした。また血糖値やコレステロール、中性脂肪の改善、血圧低下など代謝指標の改善もあわせて報告されており、肥満に伴う健康リスクの軽減が示唆されています。
- SURMOUNT-J試験(国内第III相試験): 上記の国際試験では主に欧米人が対象で、日本人への有効性は不明でした。この疑問に答えるため、日本人肥満症患者のみを対象にした試験が行われています。対象は「BMI27以上で肥満関連疾患を複数有」または「BMI35以上」の日本人成人で、ゼップバウンド10mg群・15mg群・プラセボ群に分け72週間投与するデザインです。
結果は非常に良好で、72週時点の平均体重変化率はプラセボ群 -1.7%に対し、10mg群 -17.8%、15mg群 -22.7%と有意な差がつきました。
体重5%以上減少を達成した割合もプラセボ群20.0%に対し、10mg群94.4%、15mg群96.1%と圧倒的です。
さらに副次的解析として、体重20%以上の大幅減量を達成した人が10mg群39.4%、15mg群64.5%に上ったことも報告されています。
つまり日本人においても約3人に2人は体重の1/5以上を減らせた計算で、ゼップバウンドの有効性が改めて示されました。これらの成果を受け、日本での製造販売承認につながったのです 。

(N Engl J Med 2022; 387: 205-216)
図:SURMOUNT-J試験における体重減少効果(72週間) – プラセボ群(食事・運動のみ)では体重変化がほぼ横ばい(-1.7%)でしたが、ゼップバウンド10mg群は約-17.8%、15mg群では約-22.7%まで体重が減少しています。特に治療開始後最初の24週間(6か月)ほどで急激に減量が進み、その後72週まで緩やかに減少が続く傾向が見て取れます 。このように長期にわたり持続する減量効果が確認されました。
臨床試験のデータから、ゼップバウンドは「食事・運動療法だけでは減量が難しい方にも、医学的に有意な減量をもたらす」エビデンスが示されたと言えます。
平均的な効果として1年で体重の15~20%減少が期待でき、多くの患者さんで高血圧や脂質異常など併存疾患の改善も見込まれています。
もちろん個人差はありますが、これほど高い減量率は従来の薬物療法になかったものであり、「減量のための新時代の治療薬」として注目されています。
ゼップバウンドで痩せていくプロセス – 週単位の体重変化イメージ
薬の効果で実際にどのように体重が落ちていくのか、気になるところですよね。ゼップバウンド使用開始からの大まかな「減量の流れ(タイムライン)」をイメージしてみましょう。
- 治療開始~1か月: 最初は週1回2.5mgの少量からスタートします。体が薬に慣れるまでゆっくり始めるため、この時期の減量幅は2~3%程度と穏やかです。とはいえ「最近少し食欲が落ち着いてきた」「間食が減ったかも」といった変化を感じ始める方が多い時期です。体重100kgの方なら1か月で2~3kg減といったイメージです。
- 2~3か月: 徐々に注射量を5mg、7.5mgと増やしていきます(後述の投与スケジュール参照)。薬の効果が本格的に現れ、食欲が大きく抑えられるようになります。「少量の食事で満腹感が続く」「揚げ物や甘い物を以前ほど欲しなくなった」など、食生活に良い変化が出てきます。それに伴い減量も加速し、開始3か月で5~10%減(100kg→90~95kg程度)を達成する方が多くなります。
- 6か月前後: この頃までに注射量は10mg前後に達し、効果がピークに近づきます。臨床試験では半年で体重の約15%減という驚異的な結果が報告されており、例えば100kgの方なら約85kg(-15kg)もの減量に相当します。見た目にもはっきりと変化が表れ、着られる服のサイズがダウンするなど本人の実感も強まる時期です。「最近身体が軽くなった」「少し動くだけで汗だくだったのが楽になった」と生活上の変化を感じる声もあります。
- 1年~1年半: 標準的な治療期間の目安です。必要に応じて12.5mgや最大15mgまで増量し、さらなる減量を図ります。臨床試験では1年以降もゆるやかに体重が減り続け、72週間(約1年5か月)で平均20%以上減を達成しています。
例えば100kg→80kg未満と、開始時とは別人のような体重に到達するケースもあります。個人差はありますが、減量率20%超を達成する人が半数以上にのぼることが確認されました。
ある程度減量が進むと途中で停滞期(プラトー)を迎えることもありますが、そこは焦らず継続することが大切です。主治医と相談しながら目標体重を設定し、必要なら更なる増量や生活習慣の見直しを行います。
- 1年半以降~維持期: 十分な減量が得られたら、その体重を維持するフェーズに入ります。ゼップバウンドの継続投与により食欲抑制効果を維持しつつ、食生活の改善や運動習慣を根付かせてリバウンドを防止します。治療を中止すると食欲が元に戻り体重も戻りやすい傾向があるため(後述)、主治医と相談しつつ長期的な付き合いとして治療を続けるケースが多いでしょう。
個人ごとに減量ペースは異なりますが、概ね
「ゆるやかなスタート」→「3~6か月で大幅減量」→「1年以降は緩徐な減少 or 維持」
という流れになります。急激に体重を落とす無理なダイエットではなく、体に負担をかけすぎない範囲で徐々に落とすのがゼップバウンド療法の特徴です。そのため皮下脂肪だけでなく内臓脂肪もしっかり減少し、見た目のスリム化とともに内臓脂肪型肥満に起因する様々な疾患リスクが減っていくことが期待できます。
投与方法とスケジュール – 週1回注射の流れ
〇投与方法: ゼップバウンドは週に1回、皮下に注射します。
インスリン注射のように自分でお腹や太ももなどに打つ自己注射が基本ですが、「アテオス®」という1回使い切りのオートインジェクター(ペン型注射器)を用いるため操作は簡単です。
針も細く短いため、注射時の痛みはほとんど感じません。毎週決まった曜日に1回、自宅で打てるので通院頻度も大きくありません(経過観察のため月1回程度の受診は必要です)。
〇開始用量と増量: 副作用を抑え安全に治療を進めるため、少ない用量から開始して徐々に増量するのが一般的です。具体的には 2.5mgから開始し、4週ごとに 5mg→7.5mg→10mg と段階的に増やしていきます。
多くの方は10mg前後で十分な効果が得られますが、更なる減量を目指す場合や効果が頭打ちの場合には 12.5mgや15mg まで上げることも可能です。
これは、元々糖尿病薬のマンジャロでは5mg程度が維持量でしたが、肥満症治療ではより高容量(10~15mg)を使う点が異なります。
しっかり効果を出すには時間をかけてでもこの高容量域まで到達することが推奨されています。
〇投与スケジュール例: (※主治医の指示に従ってください)
- 1~4週目: 2.5mg を週1回注射
- 5~8週目: 5mg に増量(副作用が軽微なら2.5mg→5mgへ)
- 9~12週目: 7.5mg に増量
- 13~16週目: 10mg に増量(ここまで上げると多くの方で顕著な減量効果が出ます)
- 17週目以降: 体重減少が頭打ちの場合は 12.5mg→15mg と追加増量を検討。問題なければ 10mgで維持することもあります。
※増量スピードや最終用量は忍容性(副作用のでき具合)や目標体重に応じて主治医が調整します。吐き気など副作用が強い場合は増量を遅らせたり、一段階戻した用量で様子を見ることもあります。無理なく続けることが大切です。
〇治療期間: ゼップバウンドは肥満症という「慢性疾患」に対する治療です。
高血圧症や糖尿病と同じく、症状(この場合は過剰な体重)がコントロールできている間は継続し、コントロール不良になれば調整を行うという長期的な管理が基本となります。多くの臨床試験は72週間(1年半)投与で区切られていますが、1年半経過後も治療を続ければさらに減量できる可能性がありますし、減量目標に達した後も維持目的で治療を継続することが推奨されます。
医師と相談しながら、減量経過や生活習慣の改善状況に応じて治療計画を調整していきましょう。
〇自己注射のコツ: 毎週の自己注射は慣れるまでは不安かもしれませんが、看護師等から指導を受ければすぐ習得できます。以下は一般的なポイントです。
- 注射部位はお腹周囲、太ももの前外側、二の腕の後ろ側など皮下脂肪のある部位です。毎回場所を少しずつずらし、同じ場所に続けて打たないようにします(皮下組織の硬化を防ぐため)。
- オートインジェクターはボタンを押すだけで一定時間で薬液が注入されます。注射針は見えない構造なので、注射が怖い方も安心です。
- 毎週決まった曜日に打ちますが、都合が悪い場合は多少前後(±2日程度)は調整可能です。打ち忘れた場合は次に気付いた時点でできるだけ早く打ち、その次は間隔を1週間あけて元の曜日に戻す、といった対応になります(詳しくは医師の指示を仰いでください)。
- 注射後は針を外してポイ捨てせず、必ず医療機関で回収してもらいましょう(使用済み注射針は病院薬局に設置の回収BOX等へ)。
以上のように、ゼップバウンドの投与はスケジュールさえ守れば難しいものではありません。ご自宅で自身で行える治療なので、日常生活のリズムに組み込みやすいでしょう。
副作用とリスク – よくある質問と対策
強力な効果がある一方で、副作用や安全性についても気になるところです。ゼップバウンドは比較的安全性の高い薬ですが、胃腸症状を中心にいくつか注意すべき副作用があります。ここでは主な副作用と対処法、そして患者さんからのよくある質問について解説します。
● 主な副作用(頻度と内容): 臨床試験で報告された副作用発現率トップは消化器症状でした。具体的には**「悪心(吐き気)、嘔吐、下痢、便秘、腹痛、消化不良、食欲減退」などがあり、これらは5%以上の患者に認められています。これらはいずれもインクレチンによる胃腸運動抑制や食欲抑制作用に関連したものと考えられます。多くは投与初期や増量期に現れ、一時的なものです。十分に体が慣れてくれば軽快することがほとんどですが、症状が強い場合は増量ペースを落とすなどの対応を行います。注射部位反応(皮下の赤み、かゆみ、軽い痛み、腫れ)も時にありますが、一過性で深刻なものではありません。
● 副作用への対処: 特に多い吐き気への対策としては、以下のような工夫が有効です。
- 食事量・内容の見直し: 一度に大量に食べると吐き気が出やすいので、少量をゆっくりよく噛んで食べます。脂っこい料理や甘い菓子類は胃にもたれやすいため控えめにし、タンパク質や野菜中心の消化に良い食事を心がけましょう。
- 水分補給: 吐き気があるときは無理に固形物を取らず、常温の水やお茶などを少しずつ飲んで胃腸を落ち着かせます。脱水予防も大切です。
- タイミング: 注射する曜日や時間帯を変えて様子を見るのも一法です。例えば「平日仕事がある日はつらい」という場合は金曜夜や週末に打つことで勤務に支障を減らせるかもしれません。また就寝前に注射すると、注射後のムカムカを寝ている間にやり過ごせるという声もあります。
- 頓服薬: 必要に応じて医師に相談し、胃薬や制吐剤(吐き気止め)を処方してもらうこともできます。市販の胃腸薬では効果が弱いことが多いので、症状が強い場合は我慢せず受診しましょう。
幸い、ゼップバウンドはインスリンと違い低血糖を直接引き起こす心配が少ない薬です。
血糖値が高いときにだけインスリン分泌を促すため、単独使用で血糖が下がりすぎるケースはまずありません。ただし既に糖尿病でインスリン製剤やスルホニル尿素剤を使っている方が併用すると低血糖のリスクがありますので、医師の指示のもと慎重に調整されます。SURMOUNT-J試験でも投与中に重篤な低血糖は報告されておらず、確認された軽微な低血糖イベントは全て経口ブドウ糖負荷試験中の無症候性のものだけでした (ゼップバウンド(チルゼパチド)投与による低血糖の発現状況は?)。
● 重大な副作用・リスク: 稀ではありますが、以下のような重篤な副作用の可能性も念頭に置く必要があります。
- 膵炎: GLP-1受容体作動薬全般に言われるリスクとして、急性膵炎があります。頻度は低いものの、過去にGLP-1製剤で膵炎を発症した方や膵炎の既往がある方は注意が必要です。急激な上腹部の激痛や嘔吐など膵炎を疑う症状が出た場合、ただちに医療機関を受診してください。
- 胆石・胆嚢炎: 急速な体重減少に伴い胆石が生じる可能性があります。実際、GLP-1系薬剤の長期使用で胆嚢関連疾患の発生率がやや高まるとの報告があります。右上腹部の痛みや発熱など胆嚢炎を思わせる症状にも注意しましょう。
- 甲状腺腫瘍: マウス・ラットを用いた動物試験で、チルゼパチドやGLP-1作動薬により甲状腺のC細胞腫瘍(髄様癌)が発生しやすくなるとの所見が報告されています。ヒトでの明確な因果関係は不明ですが、念のため本人または家族に甲状腺の髄様がんの既往がある方、Multiple Endocrine Neoplasia症候群(MEN2)の方には本剤は原則使用しません (新たな肥満治療薬「ゼップバウンド」、米国の薬局で販売開始 | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン))。甲状腺に関して何か不安な既往がある場合は事前に主治医へお伝えください。
- その他の重大症状: 重症のアレルギー反応(アナフィラキシー)は極めて稀ですが可能性はゼロではありません。本剤投与後に全身の蕁麻疹、息苦しさ、血圧低下などショック症状が出た場合、直ちに救急受診が必要です。また、2型糖尿病患者さんが本剤使用中に重篤な感染症や手術が必要な状態になった場合、一時的にインスリンなどへ切り替える必要があります (ゼップバウンド(チルゼパチド)の禁忌は? | 医療関係者向け – 日本イーライリリー株式会社)(ストレス時は本剤では十分な血糖コントロールができないため)。入院や手術の予定がある場合も必ず医師に報告してください。
よくある質問(FAQ)と回答
Q: 薬をやめたら体重は元に戻ってしまいますか?
A: ゼップバウンドを中止すると徐々に食欲抑制効果が消えるため、何もしなければ体重はある程度戻る可能性が高いです。実際、臨床試験でも投与終了後に体重が再増加する傾向が見られています。ただし、減量中に身につけた食習慣の改善や運動習慣を継続することでリバウンドを最小限に抑えることは可能です。必要に応じて他の薬への切り替えや維持目的の低用量投与を続ける選択肢もあります。医師と相談し、減量終了後のフォローアッププランを立てることが大切です。
Q: 美容目的で使えますか?(肥満症とまでは言えないが少し痩せたい場合)
A: 適応外使用(保険適用外)になります。 ゼップバウンドは医学的に減量が必要な「肥満症」の方を対象とした薬剤ですので、BMIが基準に満たないようなケースや美容目的のみでの使用は推奨されません。日本糖尿病学会からもGLP-1/GIP作動薬の適応外使用に関する注意喚起が出されています。効果が高い薬とはいえ、肥満症でない方が安易に使うのはリスクもあります。適応外で自費診療として処方している医療機関も一部にあるようですが、安全面を考えると適応基準を満たす場合に正規の手順で治療を受けることを強くお勧めします。
Q: 既に糖尿病で治療中ですが、ゼップバウンドは使えますか?
A: 2型糖尿病をお持ちの場合でも、条件を満たせば使用可能です。 実際、適応条件にも「2型糖尿病を有する肥満症」が含まれています。ただし、同じ成分のマンジャロ®(チルゼパチド)が糖尿病治療薬として保険適用になっているため、糖尿病のコントロールが主目的の場合はマンジャロを用いるのが一般的です。一方、「糖尿病は落ち着いているが肥満症としてさらに減量したい」というケースではゼップバウンドへの切り替えを検討することもあります。いずれにせよ主治医と相談のうえ、血糖管理と体重管理の両面から総合的に判断してもらいましょう(※1型糖尿病の方、本剤使用中の重篤感染症時や術前術後は使用不可です (ゼップバウンド(チルゼパチド)の禁忌は? | 医療関係者向け – 日本イーライリリー株式会社) (ゼップバウンド(チルゼパチド)の禁忌は? | 医療関係者向け – 日本イーライリリー株式会社))。
Q: 妊娠を希望しています/妊娠中ですが大丈夫ですか?
A: 妊娠中・授乳中の方には原則使用しません。 ゼップバウンドに限らず、体重減少薬は胎児への安全性が確立していないため妊娠中は禁忌です。妊娠が判明した時点で中止し、主治医へ報告してください。また将来的に妊娠を希望される場合も主治医に事前に伝えておきましょう。必要に応じて妊娠前に減量を完了させる計画を立てたり、他の治療法を検討します。授乳中も同様に、安全性不明のため使用を控えます。
そのほか気になる点がありましたら、遠慮なく主治医や医療スタッフにご相談ください。正しく理解し不安を解消することが、治療を成功させる上で大切です。
8. 治療費 – 保険適用と自費診療の場合の費用目安
新しい薬となると費用も気になりますね。ゼップバウンドは2025年3月に公的医療保険の薬価収載が行われ、保険適用で使用できるようになりました。ただし保険適用には先述の適応条件を満たす必要があります。ここでは、自費で使う場合の費用の概算を説明します。
● 自費診療(自由診療)の場合: 適応基準を満たさない方が美容目的などで使う場合、保険は効かず全額自己負担となります。この場合、薬剤費だけで月4~5万円程度かかる計算で、さらに診察料や検査料も全て自己負担ですから、月あたり数万円~十万円単位の出費になります (新たな肥満治療薬「ゼップバウンド」、米国の薬局で販売開始 | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン))。例えば米国ではゼップバウンドの定価が月額1,060ドル(約16万円)とされています (新たな肥満治療薬「ゼップバウンド」、米国の薬局で販売開始 | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン))。
日本では薬価が抑えられているものの、それでも決して安くはない薬です。長期で考えると経済的負担は大きいため、現実的には自費で長期間継続するのは難しいでしょう。
● 保険適用のための留意点: ゼップバウンドは最適使用推進ガイドラインによって、処方できる医療機関や患者さんの条件が細かく定められています。
具体的には「高血圧・脂質異常症・2型糖尿病のいずれかを有する肥満症」を診療する専門医療機関(日本内分泌学会・日本糖尿病学会・日本循環器学会いずれかの教育関連施設など)でのみ処方可能とされています。一般のクリニックでは処方できない場合もありますので、まずは専門の医師に相談し、紹介状をもらって高度肥満外来などを受診することになるかもしれません。当クリニックでも必要に応じて適切な医療機関をご紹介いたします。
ゼップバウンドが向いている人 – 適応条件と禁忌
ゼップバウンドは「肥満症」の治療薬です。では具体的にどのような人が治療対象となるのでしょうか。また、使えないケース(禁忌)についても確認しておきましょう。
● ゼップバウンドの適応となる人(保険適用条件): 日本における適応条件は少し複雑ですが、簡潔に言うと**「BMIが高く(27以上)、肥満に起因する健康障害を有し、かつ生活療法で十分な効果が得られない20歳以上の成人」が該当します。
加えて高血圧・脂質異常症・2型糖尿病のいずれかを併せ持つことが必要です。
言い換えると、「肥満が原因で何らかの生活習慣病や体調不良を起こしている状態」で、なおかつ「食事療法・運動療法を頑張っても効果が出なかった」というケースが対象です。具体的な判断基準として、以下のような条件が挙げられています。
- BMI(体格指数)が35以上 … 高度肥満症と定義され、合併症の有無に関わらず対象となります (持続性GIP/GLP-1受容体作動薬「ゼップバウンド®」複合的な要因からなる慢性疾患「肥満症」を適応症として国内製造販売承認を取得 | 田辺三菱製薬株式会社)。日本人ではBMI35以上は少数ですが、身長160cmなら体重約90kg以上が該当します。
- BMIが27以上35未満 かつ 肥満に関連する健康障害を2つ以上有する … BMI的には中等度肥満ですが、複数の合併症(後述)を抱えている場合はこちらも対象 (持続性GIP/GLP-1受容体作動薬「ゼップバウンド®」複合的な要因からなる慢性疾患「肥満症」を適応症として国内製造販売承認を取得 | 田辺三菱製薬株式会社)。身長160cmなら体重約69kg以上(BMI27)で、例えば高血圧と脂質異常症を両方持っている、といった方が該当します。
上記に加え、以下のいずれかの健康障害を少なくとも1つ有することが必要です(※これらは肥満が原因または増悪因子となる疾患群です):
- 高血圧(降圧薬を要するような高血圧症)
- 脂質異常症(高コレステロール血症・高中性脂肪血症など)
- 糖尿病または耐糖能異常(境界型糖尿病・糖尿病予備群を含む)
- 高尿酸血症(痛風)
- 冠動脈疾患(心筋梗塞や狭心症など心臓の動脈硬化性疾患)
- 脳血管疾患(脳梗塞の既往、一過性脳虚血発作など)
- 非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD/NASH)
- 月経異常・女性不妊(多嚢胞性卵巣症候群による月経不順、不妊など肥満関連)
- 睡眠時無呼吸症候群(OSAS)や肥満低換気症候群
- 変形性関節症(膝関節症、股関節症など体重負荷による関節疾患)、変形性脊椎症
- 肥満関連腎臓病(肥満関連糸球体腎症など)
上記リストは長いですが、「肥満が原因で起こりうる病気」を網羅したものです。要は「ある程度重い肥満で、健康に悪影響が現れている方」が対象と考えてください。逆に言えば、BMIが多少高くても健康障害が無い場合や、BMI27未満の方は原則この治療の対象にはなりません。そういった方にはまず生活習慣の是正による減量指導や別のアプローチが推奨されます。
● 使用が禁忌(避けるべき人): ゼップバウンドが使えないケースもあります。主な禁忌・注意事項は以下の通りです。
- 1型糖尿病の方、糖尿病ケトアシドーシスや糖尿病性昏睡のある方: これらの場合、減量以前に速やかなインスリン治療が必要であり、本剤では対応できません (ゼップバウンド(チルゼパチド)の禁忌は? | 医療関係者向け – 日本イーライリリー株式会社)。
- 重篤な感染症や手術前後など急性期の方(特に糖尿病合併患者): 上記と同様、ストレス下ではインスリンによる厳密な血糖管理が優先されます (ゼップバウンド(チルゼパチド)の禁忌は? | 医療関係者向け – 日本イーライリリー株式会社)。こうした場合は一時的にゼップバウンドを中断し、医療機関で適切な治療を受ける必要があります。
- 本剤の成分(チルゼパチド)に対し過敏症の既往がある方: 過去に似た薬でアレルギーを起こしたことがある場合は禁忌です (ゼップバウンド(チルゼパチド)の禁忌は? | 医療関係者向け – 日本イーライリリー株式会社)。
- 妊娠中・授乳中の方: 前述のとおり、胎児・乳児への安全性が確立していないため禁忌となります。
- 未成年(20歳未満)の方: 肥満症の定義自体が基本的に成人を対象としており、成長期の体重コントロールは別途小児科的アプローチとなります。本剤は18歳未満を対象とした試験もなく、安全性不明のため使用できません。
- 甲状腺の髄様がんの個人または家族歴がある方、MEN2の方: GLP-1受容体作動薬全般に該当する注意ですが、こうした方は本剤の使用は避けられます (新たな肥満治療薬「ゼップバウンド」、米国の薬局で販売開始 | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン))。
- 重度の腎障害・肝障害のある方: 公式な禁忌ではありませんが、腎不全・肝不全の患者では本剤の代謝や排泄が遅延し副作用リスクが高まる恐れがあります。主治医が慎重に判断します。
以上を踏まえると、ゼップバウンドが向いているのは「肥満が原因で健康リスクが高まっており、通常のダイエットでは効果が出にくかった方」です。逆に向いていないのは「軽度の肥満で健康に問題のない方」や「減量より先に治療すべき病態(例: 重篤な糖尿病)がある方」、および「妊娠希望があるなど減量のタイミングではない方」などになります。適応の有無は最終的に専門医が総合的に判断しますので、自分が当てはまるか分からない場合は一度医療機関に相談されると良いでしょう。
ダイエットを望む皆さまへ – 希望と成功に向けたメッセージ
最後に、ゼップバウンドによる治療を検討しているダイエット希望の方々へ、前向きなメッセージをお伝えします。
肥満は単に「意志が弱いから太る」というものではなく、遺伝的素因やホルモンバランス、食環境など複合的な要因からなる慢性疾患です (持続性GIP/GLP-1受容体作動薬「ゼップバウンド®」複合的な要因からなる慢性疾患「肥満症」を適応症として国内製造販売承認を取得 | 田辺三菱製薬株式会社)。ですから、ご自身を過度に責める必要はありません。これまで頑張っても痩せられなかったのは、体の仕組みが減量を阻んでいた可能性があります。その体質を根本から手助けしてくれるのがゼップバウンドという薬なのです。
ゼップバウンド治療を始めると、最初は「本当に効くのかな…」と半信半疑かもしれません。しかし週を追うごとに少しずつ体重計の数字が減り始め、鏡を見ると顔や体つきがスッキリしてくる変化を実感できるでしょう。「もしかして自分にもできるかも?」という小さな希望が、やがて「本当に痩せてきた!」という自信に変わっていきます。無理な食事制限をしていないのに自然と食事量が適正化され、「これなら続けられる」という安心感も得られるはずです。
減量が進めば、見た目の変化だけでなく健康面でも嬉しい効果が現れます。階段を上っても息切れしにくくなったり、膝や腰への負担が減って動きやすくなったり、血圧や血糖値が正常化してお薬が減らせるかもしれません。いびきが改善して睡眠の質が上がり、朝スッキリ起きられるようになる方もいます。体重が減ることは体質改善につながり、心身の負担を軽くするのです。
もちろん、どんなダイエットでもリバウンドのリスクは付きまといます。ゼップバウンドも魔法の薬ではないので、治療をやめれば食欲は元に戻り体重も増加傾向になるでしょう。しかし、治療期間中に培った生活習慣と、私たち医療チームのサポートがあればリバウンドと上手に戦う術も身につけていけます。必要に応じて治療を続けることもできるので、一緒に長期的な視点で「太りにくい体作り」を目指していきましょう。
ゼップバウンド療法は、あなた一人ではありません。医師や看護師、管理栄養士など多職種のサポートのもとで進めていきます。困ったことや不安なことがあればすぐに相談できる環境を整えています。長年のコンプレックスであった体重の悩みを克服し、新しい自分に出会えるチャンスです。焦らず、しかし着実に、一歩ずつ前進していきましょう。
当院でも、ゼップバウンドを用いた肥満症治療について詳しいご説明やご相談を随時受け付けております。まずはお気軽にお問い合わせください。「これなら自分も痩せられるかもしれない」その希望、私たちと一緒に現実のものにしてみませんか? あなたのダイエット成功への道筋を、全力でサポートいたします。
参考文献・情報源: 最新の臨床試験データおよび公的発表資料に基づいて作成(一部抜粋) (持続性GIP/GLP-1受容体作動薬「ゼップバウンド®」複合的な要因からなる慢性疾患「肥満症」を適応症として国内製造販売承認を取得 | 田辺三菱製薬株式会社) (新たな肥満治療薬「ゼップバウンド」、米国の薬局で販売開始 | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)) (持続性GIP/GLP-1受容体作動薬「ゼップバウンド®」複合的な要因からなる慢性疾患「肥満症」を適応症として国内製造販売承認を取得 | 田辺三菱製薬株式会社) 他.
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