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糖尿病かもしれないと思った方へ

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目次

糖尿病かどうか、どうしたらわかるの?

問診 採血 尿検査でわかります

糖尿病は自覚症状がほとんどないのが特徴です。そのため、定期健診や人間ドックで行われている問診、尿検査、血液検査などが糖尿病早期発見の目安となります。

最終的に糖尿病と診断するには、病院(専門医)に受診してさらにくわしく調べることが必要です。
この段階ではまだ「糖尿病の疑いがある」状態ですから、そのままにしないで必ず糖尿病診断のための検査を受けましょう。

糖尿病が疑われる検査結果はどの数字?

血糖値とHbA1cを目安にします

診断のための検査

糖尿病診断のための検査は、食事の影響によって変動する血糖値測定のタイミングを3つに分けたものです。

随時血糖検査

食後からの時間を決めないで採血し、血糖値を測る検査です 。

随時血糖値が200mg/dL以上ある場合は、「糖尿病型」と診断されます 。

早朝空腹時血糖検査

検査当日の朝食を抜いた空腹の状態で採血し、血糖値を測る検査です。

10時間以上何も食事していない状況で測定した血糖値です。

早朝空腹時血糖値が126mg/dL以上ある場合は、「糖尿病型」と診断されます。 

75gOGTT(75g経口ブドウ糖負荷試験)

検査当日の朝まで10時間以上絶食した空腹のまま採血し、血糖値を測ります。次に、ブドウ糖液(ブドウ糖75gを水に溶かしたもの、またはデンプン分解産物相当量)を飲み、ブドウ糖負荷後、30分、1時間と2時間後に採血し、血糖値を測るという検査です。

自分の身体の中で分泌された食後のインスリンの効果を確認することができます。


*75g経口ブドウ糖負荷試験の注意点

自覚症状などから明らかな高血糖が推測される場合には、75gOGTTは糖尿病の診断に必要ではなく、
まず空腹時血糖または随時血糖を測定するべきです。

著しい高血糖状態で75gOGTTを行うと、さらなる高血糖を引き起こす可能性があるため有害です。

HbA1c


過去1〜2ヶ月の平均血糖値を反映します

【MEMO】HbA1cの国際標準化に伴う表記法の変更
糖尿病の血糖コントロールを用いられる指標はHbA1cの値でしたが、これまで国内と海外での基準の若干の違いがありました。日本糖尿病学会では、段階的に国内のHbA1cを海外の基準であるNGSPのHbA1c値に変換することを発表しており、2011年7月1日にHbA1cの値はNGSPに相当する国際基準値とすることになっています。
2011年10月1日で検査医学標準物質機構がNGSPの基準測定施設の認証を得たことで、
国内で使用してきたHbA1cとNGPSのHbA1cが換算できるようになっています。

【MEMO】HbA1c換算式
①HbA1c(NGPS)(%)=1.02×HbA1c(JDS)(%))+0.25%  
②HbA1c(JDS)(%)=0.980×HbA1c(NGSP)(%)-0.245%  
この換算式①を計算(小数点以下三位まで計算し、第二位を四捨五入)
・HbA1c(JDS) (%)が4.9%以下 : HbA1c(NGSP)(%) = HbA1c(JDS)(%) + 0.3%
           5.0から9.9%  : HbA1c(NGSP)(%) = HbA1c(JDS)(%) + 0.4%
           10.0から14.9% : HbA1c(NGSP)(%) = HbA1c(JDS)(%) + 0.5%
となり、計算すると
・HbA1c(JDS)(%)が5.2%以下  : HbA1c(JDS)(%) = HbA1c(NGSP)(%) -0.3%
           5.3から10.2%  : HbA1c(JDS)(%) = HbA1c(NGSP)(%) -0.4%
           10.3から15.2% : HbA1c(JDS)(%) = HbA1c(NGSP)(%) -0.5%
※臨床検査の報告書などで、文字数の制限などによりHbA1c(JDS)、HbA1c(NGSP)との表記ができない場合は、HbA1c(JDS)の略をHbA1c、HbA1c(NGSP)の略をA1Cと表記します。
日常の診療で用いているHbA1cには2012年4月1日からHbA1c(NGSP)が使用されています。
特定健診・保健指導においても、2013年4月1日以降検査分よりHbA1c(NGSP)を使用することとなっています。

糖尿病の診断

1〜4のいずれかが確認された場合は「糖尿病型」と判定されます。

別の日にもう一度検査をして、ふたたび血糖値に異常があって糖尿病型と診断された場合、「糖尿病」と確定診断されます。

  1. 早朝空腹時血糖値126mg/dL以上
  2. 75gOGTT2時間値200mg/dL以上
  3. 随時血糖値*200mg/dL以上
  4. HbA1Cが6.5%以上
  5. 早朝空腹時血糖値110mg/dL未満
  6. 75gOGTT2時間値140mg/dL未満

*随時血糖値:食事と採血時間との時間関係を問わないで測定した血糖値。糖負荷後の血糖値は除く。

5および6の血糖値が確認された場合には、「正常型」と診断されます。

糖尿病診断基準に関する調査検討委員会:糖尿病 55(7):485,2012より作図

※初回検査で糖尿病と診断されなければ、別の日に2回目の検査を行う。

WHOでは、75gOGTTでの境界型 (耐糖能異常) 例を冠動脈疾患のリスクグループとしており、 虚血性心疾患の一次予防のために、食事療法・運動療法は糖尿病発症以前より開始されるべきであると勧告しています。

また、欧米では、SGLT2阻害薬やGLP-1受容体作動薬の一部が、心血管疾患ハイリスク患者の心血管複合エンドポイントの低減に有効であることが報告されています。

注) 糖尿病は心不全の危険因子のひとつであり

収縮不全 (heart failure with reducedejection fraction: HFrEF) より拡張不全 (heart failure with preserved ejection fraction: HFpEF)が多くみられます。

境界型とメタボリックシンドローム

境界型とは

糖尿病の診断基準には、「糖尿病型」、「正常型」いずれにも該当しない「境界型」というグループがあります。 

“「境界型」といっても「糖尿病型」ではないから安心?”
残念ながら、そういうことではないのです。 

「境界型耐糖能異常」は、将来、糖尿病になる可能性が高いため、6ヵ月~1年ごとに検査することが推奨されています。
また、動脈硬化へも影響をおよぼし、心筋梗塞や脳梗塞になるリスクが高くなると言われています。

このようなリスクを避けるため、
「境界型耐糖能異常」の人でも、食事や運動などの生活習慣を見直し、血糖値の改善をめざすことをおすすめします。

なぜ2型糖尿病になるの?

2型糖尿病の発症には過食運動不足といった生活習慣が関係します。
正しい生活習慣を身につけることが2型糖尿病の予防では大切です。摂取カロリーや糖質の量より、インスリンが少ないことやインスリンの効きが悪くなっている状態で血糖値が上がります。(2型糖尿病の場合)

2型糖尿病は2つの原因によって起こります。

1つ目は膵臓が弱ってしまうこと、つまりインスリンを出す力が不足したりタイミングが悪くなったりしてしまうことです。

2つ目は肝臓や筋肉を始めとした全身の組織でインスリンの効きが悪くなることです。

【MEMO】 血糖値を下げるホルモン「インスリン」

インスリンはすい臓から分泌されるホルモンで、血液中の糖の量を調節します。食事をすると、糖が吸収されて血糖値が上がりますが、インスリンが分泌されると血糖が細胞に取り込まれるため、血糖値が下がります。しかし、食べ過ぎや運動不足といった生活習慣の乱れや、遺伝などの影響で、インスリンの分泌が減ったり、インスリンが分泌されていても肝臓や筋肉でのインスリンの働きが悪くなって(インスリン抵抗性)、血糖値が高い状態が続くことになります。

参考:日本糖尿病学会 編・著: 患者さんとその家族のための糖尿病治療の手びき改訂第58版, p.2-6, 南江堂 2020

医療情報科学研究所 編.病気がみえる vol. 3 糖尿病・代謝・内分泌 第5版. メディックメディア, 2019: 12. より改変

膵臓から出ているインスリンやグルカゴンは1日を通じて分泌されており、食間や夜間は2つのホルモンのバランスにより血糖値は一定範囲内に保たれています。食事によりグルコースが体に取り込まれると、血糖値は上昇しますが、インスリンの分泌量が増え、血糖値は速やかに元の状態に戻ります。通常では、このようなメカニズムで血糖値は常に一定範囲内に保たれています。しかし、糖尿病になると、血糖値を一定範囲内に保つメカニズムが働きにくくなるため、血糖値の高い状態が常に続くようになります。

医療情報科学研究所 編.病気がみえる vol. 3 糖尿病・代謝・内分泌 第5版. メディックメディア, 2019: 34

糖尿病の初期症状ってどんな症状?

初期には自覚症状はありません。しかし、放おっておくと症状を感じます

糖尿病の初期症状では、自覚症状が全くないことが多く、症状が出ても軽いものです。しかし、血糖が高くなると、手足の痛みやしびれ、尿量と回数が多くなる、喉の渇き、皮膚の乾燥やかゆみ、体がだるくなる、ED(勃起不全)、などの症状が現れます。

【糖尿病の初期症状】

(イラスト)

糖尿病は、初期の段階では自覚症状が全くないことが多く、気づきにくいです。 しかし、随時血糖値が160mg/dlを超えてさらに高くなってくると、初期症状が出てきます。 原因は主に、細い血管の障害による血流の悪化と、それにより体の隅々まで酸素や栄養が運ばれなくなることで起きる神経の障害です。

手足のしびれ(イラスト)

毛細血管がダメージを受けて酸素や栄養が運ばれなくなると、末梢神経が障害を受けるので、足の指や足の裏に痛みやしびれが出ます。さらに症状が進むと、しびれは手の指にも現れます。

頻尿 多尿 多汗 口渇(イラスト)

頻尿・多尿になるのは、血液中の糖を体の外に出そうとして、腎臓が大量に尿を作ります。汗が多くなるのも、汗として糖を体外に排出しようとする体の防衛反応が起こります。また、体から水分が失われていくので、のどの渇きは徐々にひどくなります。

皮膚のかゆみ(イラスト)

血流障害により、皮膚に栄養や酸素が運ばれなくなるので、皮膚が乾燥してかゆみが出ます。

勃起障害 (イラスト)

陰茎にある神経に障害が起きて、性的な刺激を感じづらくなります。 活性酸素により血管が壊されているので、勃起する、勃起を維持する、ための血流が阻害されてしまいます。 高血糖が原因でEDになりやすくなります。

血糖値が高いと身体で何が起こる?

☆血糖上昇→血流障害→血管を傷つける→合併症が発症・進行

  1. 生活習慣の乱れ 体重過多 インスリン分泌機能低下
  2. インスリンが足りない・効かない状態が続き、血管内が糖だらけになる
  3. 糖が急に増えると、血管の内側から活性酵素が大量に発生
  4. 糖が血液で渋滞し、活性酵素が血管を破壊する
  5. 酵素と栄養素が届かず、自覚症状が出始める
  6. 放置しておくと合併症が発症する

血糖値が高いまま長い間放置すると合併症が起こる可能性が高まる

血糖値がとても高い状態が長期間にわたって続くと、多くの場合、糖尿病の合併症が起こります。

合併症は糖尿病になって数ヵ月のうちに始まるものもありますが、その多くは数年が経過してから症状が現れます。合併症の多くは進行性で、血糖値を厳密にコントロールしている人ほど合併症を発症したり悪化することが少ない傾向にあります。

参考:日本糖尿病学会 編・著: 患者さんとその家族のための糖尿病治療の手びき改訂第58版, p.24, 南江堂 2020

糖尿病の疑いがあると言われたら、どうしたらいいの?

そのままにしないで必ず糖尿病診断のための検査を受けましょう。

糖尿病の診断では、慢性高血糖を確認し、症状や臨床所見などを参考に総合判断します。

検査では1回は必ず血糖値で糖尿病型を確認する必要があります。以下の4つのうちいずれかがあった場合を糖尿病型といいます。

  • 早朝空腹時血糖値126mg/dL以上
  • 75gOGTT2時間値200mg/dL以上
  • 随時血糖値*200mg/dL以上
  • HbA1Cが6.5%以上

糖尿病のタイプってあるの?

糖尿病は原因別にいくつかのタイプに分類されます。

1型糖尿病

1型糖尿病の多くは、遺伝因子に加え、ウィルス感染などの環境因子が引き金となって、自己免疫異常が起こり、膵β細胞が破壊されることで発症すると考えられています

2型糖尿病

2型糖尿病は、インスリン分泌障害とインスリン抵抗性が関与します。

インスリン抵抗性には、主に生活習慣病に起因する環境因子も関与しています。1型糖尿病と異なり、進行が緩徐であるため、発症しても長期間自覚症状がないため、早期に診断されても受診・治療せず合併症が進行してしまうことがあります。

その他の特定のタイプ

遺伝因子として遺伝子異常が同定されたものや他の疾患、条件に伴うものがあります。

妊娠糖尿病

妊娠中にはじめて見つかる糖代謝異常のことです。

参考:日本糖尿病学会 編・著: 糖尿病治療ガイド2020-2021, p.18, 100-103, 文光堂 2020
参考:日本糖尿病学会 編・著:患者さんとその家族のための糖尿病治療の手びき改訂第58版, p.16-22, 南江堂 2020

2型糖尿病にならないためにはどうしたらいいの?

まずは肥満を解消しましょう

肥満は高血圧や脂質異常症など他の生活習慣病の原因の一つとなります。2型糖尿病にならないためには、まず肥満に注意することが必要です。そのために規則正しい生活を送ること、食べ過ぎず、バランスの良い食事をとること、適度な運動を行うことが重要です。

ただ、日本人は欧米人と比べてインスリンの分泌が少ないので、肥満でなくても糖尿病になる危険性が高いことが特徴です。肥満でないから、と安心するのではなく、日常生活に気をつけて血糖をコントロールしていきましょう。

参考:日本糖尿病学会 編・著: 糖尿病治療ガイド2020-2021, p.56, 文光堂 2020より

2型糖尿病になりやすい人

参考:日本糖尿病学会 編・著:患者さんとその家族のための糖尿病治療の手びき改訂第58版, p.16-22, 南江堂 2020

なぜ1型糖尿病になるの?

1型糖尿病の多くは遺伝子に加え、ウィルス感染などの環境因子が引き金となって自己免疫異常が起こり、
膵β細胞が破壊されることで発症すると考えられています

膵臓にあるインスリンを作り出す細胞(β細胞)が破壊されてしまい、インスリン分泌がほとんどなくなってしまうタイプの糖尿病です。発病の原因は自己免疫疾患によるもののほか、原因不明の場合もあります。生活習慣とは関係ありません。
また、2型糖尿病の発病には遺伝的なことが比較的強く関係していますが、1型糖尿病の場合、遺伝的要素はそれほど強くありません。1型糖尿病は幼児から未成年のあいだに多く発病します。発病すると間もなくインスリン分泌がなくなるので、体外から注射などによってインスリンを補給し続けなければ生命を維持できず、インスリン療法が必須となります。

1型糖尿病になったらどうしたらいいの?

インスリン注射が必要になります。治療・受診が継続できる主治医を見つけましょう

1型糖尿病は発症初期にケトアシドーシスの代謝異常が起こることが多く治療が遅れると生命に関わることがあるため、
尿糖や血糖チェックが必要です。
ほとんどの場合は一生インスリンを注射で外から補充する必要があるので、患者さんと家族が理解を深め、
糖尿病と上手に付き合っていくことが大切です。

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