監修:小林 正敬(こばやし まさたか)|まさぼ内科・糖尿病クリニック飯田橋院 代表理事兼院長。日本糖尿病学会 糖尿病専門医・日本内科学会 総合内科専門医・日本糖尿病協会療養指導医・日本東洋医学会所属。 最終更新:2026年10月
マンジャロで2型糖尿病を治療中に体重が停滞している方も、ゼップバウンドを続けている方も、これから治療を始める方も、レタトルチドを待った方がよいのでしょうか。私は新薬を待つために治療を先送りせず、今の体重・血糖の変化と困っている症状から、治療を見直します。日本で使えるまでに開発や申請の段階が残っている薬だからこそ、今の承認薬で得ている効果を生かしながら、目の前の課題に取り組む方針です。
結論を先に:レタトルチドはGIP・GLP-1・グルカゴンに働く週1回皮下注射の三重作動薬です。TRIUMPH-1の80週・12mgでは、計画どおり続けた場合の推定で体重−28.3%(プラセボ−2.2%)でした。 開発コードはLY3437943です。
米国では承認申請がまだ提出されておらず、開発元は2027年第1四半期の提出を予定しています。
日本では承認申請の公表がなく、肥満症・2型糖尿病を対象とする第3相試験は国内にありません。
この記事でわかること
- 受容体に働く仕組みと、マンジャロ・ゼップバウンドとの成分の違い
- 体重と血糖の試験結果を、自分の病状に合わせて考える方法
- 消化器症状、皮膚感覚異常、心拍数などの報告
- 米国と日本で使える時期を考えるための開発状況
- 体重が停滞したときに、今の治療で確認すること
日本での承認状況(2026年10月4日確認)
米国への承認申請は未提出で、開発元はFDAへのBLA(生物学的製剤の承認申請)を2027年第1四半期に提出する予定と公表しています。日本の承認申請は公表されておらず、PMDAに届出のある第Ⅲ相はMASLD(代謝機能障害関連脂肪性肝疾患=脂肪肝の新しい呼び方)のみで、肥満症・2型糖尿病の第Ⅲ相は確認できません。この記事は、企業の公表資料・査読済み臨床試験・公的登録(PMDA・ClinicalTrials.gov・jRCT)に基づく一般向けの医療情報であり、個別の診断・治療や未承認薬の使用を勧めるものではありません。承認状況を毎月確認し、変更があれば本ページの記載を更新します。
主な更新履歴: 2026年10月4日 初版公開
1. レタトルチド早見表:30秒でわかる要点
レタトルチドはGIP・GLP-1・グルカゴンの三重作動薬で、週1回の皮下注射です。開発元は米国の製薬会社イーライリリー・アンド・カンパニー(以下、リリー)です。日本では未承認で、米国は申請前、会社は2027年第1四半期の申請提出を予定しています。
新薬の名前や減量幅が気になっている方は、まず薬の仕組みと承認状況を見ると、今の治療との違いが分かります。
| 項目 | 要点 |
|---|---|
| 一般名・読み方・開発コード | retatrutideの日本語の読みはレタトルチド。開発コードLY3437943。 |
| 別名 | 三重作動薬はトリプルアゴニストとも呼ばれ、トリプルGは俗称です。 |
| 何の薬か | GIP・GLP-1・グルカゴンの受容体に働く、リリーの開発薬です。 |
| 投与法 | 週1回皮下注射。試験では2mgから段階的に増やし、維持用量は4mg・9mg・12mgです。維持用量は試験によって異なり、TRIUMPH-3・4では9mg・12mgを調べています。 |
| 効果の代表値 | TRIUMPH-1・80週・12mg・計画どおり続けた場合の推定で体重−28.3%、プラセボ(有効成分を含まない比較用の注射)−2.2%。 |
| 主な副作用 | 吐き気などの消化器症状。TRIUMPH-1の有害事象による中止は12mgで11.3%、プラセボ4.9%。 |
| 米国の状況 | FDA申請前であり、会社が示す提出時期は2027年第1四半期です。 |
| 日本の状況 | 国内では未承認です。申請の発表もありません。第Ⅲ相の届出はMASLDのみです。 |
| マンジャロ・ゼップバウンドとの違い | 同じ会社のチルゼパチドはGIP・GLP-1に作用し、レタトルチドはグルカゴンにも作用しますが、直接比較の結果は未公表です。 |
(スマートフォンでは表を横にスクロールできます)
出典:1、5、8、15、21。
2. レタトルチド(retatrutide)とは?三重作動薬・トリプルアゴニストの仕組み
レタトルチドは、単一のペプチドがGIP・GLP-1・グルカゴンの受容体に働く薬です。マンジャロの改良版ではなく、成分そのものが違います。
受容体に単一の分子で働く
レタトルチドは、1つの分子でGIP・GLP-1・グルカゴンの3つの受容体に働きます。受容体とは、細胞がホルモンなどの働きを受け取る場所のこと。2つの成分を混ぜた配合薬のカグリセマとは、薬の作りが違います。体内の薬の量が半分になるまでに約6日かかる性質があり、この時間を「半減期」と呼びます。長く体内にとどまるため、週1回の皮下注射に適しています(出典1、2)。
グルカゴンへの作用を加える意味
グルカゴンの働きを加える狙いは、食べる量を抑える以外の面からも減量につなげることです。グルカゴンは肝臓で糖を作って血糖を上げる一方、肝脂肪の減少やエネルギー消費の増加にも関わります。単独では血糖が上がるため、GLP-1と一緒に働かせて、その上がる分を打ち消す作りです(出典3)。
エネルギー消費が増えて減量につながるという説明は、肥満マウスで確かめられたものです(Coskun ら、Cell Metab 2022)。この実験では、食べる量が減る作用に、グルカゴンによるエネルギー消費の増加が加わり、体重がより大きく減りました。人で同じ仕組みが働くかは未確認であり、実際の減量幅は臨床試験の結果を見て判断します(出典1)。
血糖を上げる方向の作用が、人で問題になっていないかも気になるところでしょう。TRIUMPH-3で高血糖の有害事象が報告された割合は、9mgで3.9%、12mgで3.1%、プラセボで13.4%でした。この試験では、レタトルチドを使った人の方が高血糖を多く経験した、という結果ではありませんでした(出典8)。
ウゴービ、マンジャロとの成分の違い
作用する受容体は、ウゴービではGLP-1、マンジャロ・ゼップバウンドではGIPとGLP-1、レタトルチドではGIPとGLP-1にグルカゴンを加えたものです。マンジャロを使っている方は、「今の量がレタトルチドのどの量に当たるか」と考えるかもしれません。しかし別成分の薬なので、用量を対応させてそのまま置き換える関係にはありません(出典1、18、19、20)。
開発名と製品名を分ける
レタトルチドは成分の一般名で、英字ではretatrutide、開発コードではLY3437943と表します。三重作動薬(トリプルアゴニスト)に分類され、トリプルGは俗称です。開発元はリリー、日本の治験依頼者はリリーの日本法人である日本イーライリリー株式会社(以下、日本イーライリリー)で、製品名はまだ公表されていません。名前がいくつあっても、承認された製品が別にあるという意味ではなく、同じ開発薬を指しています(出典28)。

3. 効果はどれくらい?体重と血糖の試験結果
TRIUMPH-1の12mg・80週では、計画どおり続けた場合の推定で体重−28.3%(プラセボ−2.2%)でした。同じ試験に2つの推定量があり、どの方法で求めた数値かを確認して比べます。
3-1. TRIUMPH-1:2型糖尿病のない肥満症の人
TRIUMPH-1に参加したのは、2型糖尿病のない成人2,339人です。BMI(身長と体重から求める体格の指標)が30以上、または27以上で、高血圧・脂質異常症・閉塞性睡眠時無呼吸・心血管疾患のいずれかがある人を対象にしました。糖尿病の治療中の方は、ご自身とは病状が違う人の結果として捉えてください(出典5、6、14)。
体重は、レタトルチドを使った人の方がプラセボを使った人より大きく減りました。80週の変化は、計画どおり続けた場合の推定で4mgが−19.0%、9mgが−25.9%、12mgが−28.3%、プラセボが−2.2%です。途中でやめた人も含めた推定では、それぞれ−17.6%、−23.7%、−25.0%、プラセボ−3.9%でした。治療を続けられたかどうかも、減量の結果に関わります(出典5、6)。
−28.3%と−25.0%は、同じ試験を違う前提で計算した値です。計画どおり続けた場合の推定(efficacy estimand)は、薬を予定どおり続け、禁止された体重管理治療を始めなかった場合の効果を求めます。途中でやめた人も含めた推定(treatment-regimen estimand)は、薬をやめた人も全員含めた平均で、論文の主な解析です(Jastreboff ら、NEJM 2026)。後者では体重−25.0%に対してプラセボ−3.9%であり、続けた場合の効果と、中止も含めた治療全体の結果を分けて考えます(出典5、6)。
平均値と同じだけ全員が減量したわけではありません。80週・12mg群で25%以上/30%以上/35%以上の減量を達成した割合は62.5%/45.3%/27.2%、プラセボでは2.2%/0.5%/0.3%でした。同じ量を使った人の間にも、減り方には幅があります(出典5、6、13)。
長く続けた人を調べた104週延長では、12mgで計画どおり続けた場合の推定−30.3%、途中でやめた人も含めた推定−29.9%でした。対象は、開始時BMI35以上で延長に参加した532人だけで、プラセボの値はありません。これは試験全体の結果ではなく、延長に参加できた人の経過です(出典5)。
体重が最も大きく減った用量を、全員が目指すわけではありません。12mg群では、十分または過度に減ったと感じて5.3%が中止し、副作用などで永続的に用量を下げた人は22.5%でした。論文でも、耐えられる最大量まで増やすより、目標に必要な最小有効量を目指す考え方が述べられています。減量幅とともに、その量で治療を続けられるかを見ていくということです(出典6)。

3-2. 2型糖尿病のある人では、体重とHbA1cを確認する
マンジャロで糖尿病を治療している方には、糖尿病のない試験より、TRIUMPH-2の方がご自身に近い対象です。ただし、マンジャロから乗り換えた効果を調べた試験ではありません。BMI27以上の2型糖尿病1,152人が参加し、HbA1c(血糖の平均的な状態を示す指標)は6.5〜10.5%が条件でした。食事・運動だけで治療する人から飲み薬3剤を使う人までを含み、治療を90日以上変えていない人を調べています(出典8、9、37)。
TRIUMPH-2では、体重と血糖の両方が改善しました。80週の計画どおり続けた場合の推定で、4mg・9mg・12mgの体重変化は−12.7%・−19.1%・−20.8%、プラセボは−4.0%です。HbA1cは−1.4・−1.6・−1.5ポイント、プラセボ−0.2ポイントで、最も大きく下がったのは9mgでした。体重が最も減る量と、血糖が最も下がる量は同じではなかったのです(出典8)。
途中でやめた人も含めた推定では、TRIUMPH-2・80週の4mg・9mg・12mgで−11.9%・−16.8%・−18.8%、プラセボ−5.1%でした。糖尿病のない試験より減量幅は小さくても、対象も併用薬も違うので、どちらが効くという比較にはなりません。2型糖尿病のある人の結果として、80週・12mgで−18.8%、プラセボ−5.1%という平均を、ご自身の病状と重ねて考えるのが出発点です(出典9)。
TRANSCEND-T2D-1では、血糖を下げる薬を使っていない2型糖尿病537人を調べました。40週の計画どおり続けた場合の推定で、4mg・9mg・12mgの体重変化は−11.5%・−15.5%・−16.8%、プラセボは−2.5%です。薬を使う前の人の結果なので、すでに治療を続けている方は、ご自身の治療内容との違いを踏まえて考えます(出典11)。
同試験では、計算の前提を変えても血糖の改善が見られました。40週の4mg・9mg・12mgのHbA1cは、計画どおり続けた場合の推定で−1.7・−2.0・−1.9ポイント(プラセボ−0.8ポイント)、途中でやめた人も含めた推定で−1.69・−1.86・−1.94ポイント(プラセボ−0.81ポイント)でした。体重の数値は表2にまとめています。糖尿病の治療として考えるときは、減量幅だけでなく、血糖への効果も合わせて判断します(出典11、12)。
3-3. 心血管疾患や膝の痛みがある人の試験
心血管疾患や膝の痛みがある人でも、体重が減った結果が報告されています。TRIUMPH-3は心血管疾患のある重症肥満1,949人が対象で、80週・9mg/12mgの計画どおり続けた場合の推定は−21.6%/−22.6%、プラセボ−3.2%でした。TRIUMPH-4は糖尿病のない膝変形性関節症445人を調べ、68週・9mg/12mgの同じ推定量は−26.4%/−28.7%、プラセボ−2.1%です。ここで挙げた数値は体重の変化です。心臓の病気や膝の痛みへの効果を知るには、それぞれの評価項目の結果を見ます(出典8、10、38、39)。
3-4. 肝脂肪や睡眠時無呼吸も調べられている
体重だけでなく、肝臓にたまった脂肪が減るかも研究されています。第2相MASLDサブスタディでは、肝脂肪10%以上の98人を調べました。24週・12mgの肝脂肪の相対変化は−82.4%、プラセボは+0.3%で、肝脂肪5%未満になった割合は86%対0%です。日本の第3相もMASLDを対象としており、国内の開発はこの肝臓の病気につながっています(出典7、17、21、22)。
TRIUMPH-1では、一部の参加者で睡眠時無呼吸と膝痛も評価しています。体重を減らすだけでなく、肥満に伴って困っている症状がどう変わるかまで調べている段階です(出典6)。
3-5. 自分に近い対象者と、同じ条件の数値を見る
数字を見るときは、誰を対象に、どれだけの期間、どの用量を使い、どの推定量で何と比べたかを一緒に確認します。%は開始体重に対する割合で、平均値と同じ割合で全員の体重が減るわけではありません。ご自身の結果と比べるなら、まず病状や治療内容が近い試験を探すところから始めます(出典14、15、37、38、39)。
表2 主な試験の対象と用量別の体重変化
| 試験 | 対象 | n | 週 | 推定量 | 1mg | 4mg | 8mg | 9mg | 12mg | プラセボ | 出典番号 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 第2相・肥満(1/4/8/12mg) | 肥満 | 338 | 48週 | — | −8.7% | −17.1% | −22.8% | — | −24.2% | −2.1% | 4 |
| TRIUMPH-1 | BMI30以上、または27以上で高血圧・脂質異常症・閉塞性睡眠時無呼吸・心血管疾患のいずれか。2型糖尿病なし | 2,339 | 80週 | 計画どおり続けた場合の推定 | — | −19.0% | — | −25.9% | −28.3% | −2.2% | 5、6、14 |
| TRIUMPH-1 | 同上 | 2,339 | 80週 | 途中でやめた人も含めた推定 | — | −17.6% | — | −23.7% | −25.0% | −3.9% | 5、6、14 |
| TRIUMPH-2 | BMI27以上・2型糖尿病、HbA1c6.5〜10.5%、治療が90日以上安定 | 1,152 | 80週 | 計画どおり続けた場合の推定 | — | −12.7% | — | −19.1% | −20.8% | −4.0% | 8、9、37 |
| TRIUMPH-2 | 同上 | 1,152 | 80週 | 途中でやめた人も含めた推定 | — | −11.9% | — | −16.8% | −18.8% | −5.1% | 8、9、37 |
| TRANSCEND-T2D-1 | 2型糖尿病・食事運動のみ、血糖降下薬なし | 537 | 40週 | 計画どおり続けた場合の推定 | — | −11.5% | — | −15.5% | −16.8% | −2.5% | 11、12 |
| TRANSCEND-T2D-1 | 同上 | 537 | 40週 | 途中でやめた人も含めた推定 | — | −11.5% | — | −13.9% | −15.3% | −2.6% | 11、12 |
| TRIUMPH-3 | BMI35以上・心筋梗塞、脳卒中、症状のある末梢動脈疾患のいずれかの既往 | 1,949 | 80週 | 計画どおり続けた場合の推定 | — | — | — | −21.6% | −22.6% | −3.2% | 8、38 |
| TRIUMPH-4 | BMI27以上・膝痛12週以上、X線で中等度の変化がある膝変形性関節症。糖尿病なし | 445 | 68週 | 計画どおり続けた場合の推定 | — | — | — | −26.4% | −28.7% | −2.1% | 10、39 |
| TRIUMPH-4 | 同上 | 445 | 68週 | 途中でやめた人も含めた推定 | — | — | — | −20.0% | −23.7% | −4.6% | 10、39 |
(スマートフォンでは表を横にスクロールできます)
対象列の補足:TRIUMPHの各試験では、食事療法で減量できなかった経験も参加条件でした。
凡例:計画どおり続けた場合の推定=継続を前提とした効果、途中でやめた人も含めた推定=継続の有無を問わない平均、—=推定量の記載なし・該当用量なし・公表値なし。TRIUMPH-3の途中でやめた人も含めた推定は公表値なし。
4. マンジャロ・ゼップバウンドより効くのか?乗り換えをどう考える?
チルゼパチドとの直接比較試験TRIUMPH-5は結果待ちで、レタトルチドの方が効くという結論は出ていません。私は、新薬の減量幅だけを理由に、今のマンジャロで得ている効果を手放しません。
4-1. 同じ会社でも、別の成分を比べている
同じ会社の薬なら、今の治療をそのまま引き継げそうに感じるかもしれません。マンジャロとゼップバウンドに含まれるチルゼパチドはGIP・GLP-1に作用しますが、レタトルチドは別の分子です(出典1、18、19)。
4-2. 直接比較はTRIUMPH-5で調べている
チルゼパチドとの効果の違いは、TRIUMPH-5の結果を待って判断します。肥満症の成人約800人で両薬を直接比べ、80週の体重変化率を評価する試験です。主要評価完了予定は2026年11月で、結果はまだ公表されていません。別々の試験の減量幅を並べるより、同じ条件で比べた結果が判断の根拠になります(出典15)。
試験の数字だけを並べると、レタトルチドの方が大きく減ったように見えます。TRIUMPH-1の80週・12mgでは、計画どおり続けた場合の推定で−28.3%、プラセボ−2.2%でした。SURMOUNT-1の72週・チルゼパチド15mgでは、途中でやめた人も含めた推定で−20.9%、プラセボ−3.1%です。しかし、2022年に報告された後者の結果は、先ほどの結果とは週数・推定量・対象集団が違います。私は、薬を選ぶ根拠となる効果の違いを、直接比較の結果から判断します(出典5、26)。
日本人の情報があるかどうかにも違いがあります。ゼップバウンドには日本人のSURMOUNT-Jがあり、72週・チルゼパチド15mgで−22.7%、プラセボ−1.7%でした。対象集団と週数が先ほどのレタトルチドの試験とは異なるため、この減量幅から薬の優劣は判断できません。レタトルチドで完了している日本人の試験は初期段階であり、日本人でどこまで調べられているかも、今使う薬を考える材料です(出典25)。
4-3. 停滞だけで乗り換えを決めない
私は、マンジャロで体重が停滞しても、別の試験の減量幅を根拠に乗り換えを決めません。TRIUMPH-5は肥満症での直接比較です。マンジャロを約1年使った2型糖尿病の方が、変更後にどれだけ減量できるかを示す結果ではありません。日本で通常の診療として切り替えられる段階でもないため、まず今の薬で得ている血糖への効果を確認します。そのうえで、用量や治療内容を変える理由があるかを診察で判断します。
4-4. 2型糖尿病の治療と肥満症の治療を分けて考える
米国で公表された申請予定に、2型糖尿病は含まれていません(出典8、27)。日本で糖尿病を治療する方には、マンジャロが2型糖尿病の承認薬に当たります。肥満症を治療する方が相談するのは、同じチルゼパチドでもゼップバウンドです。減量幅だけで選ばず、治療する病気と目標に合う承認薬を考えます。ゼップバウンドの診療の流れとフォロー体制は当院のページにまとめています。

5. 副作用はどうか?三重作動薬だから強く出る?
主な有害事象は吐き気・下痢・便秘・嘔吐です。TRIUMPH-1の有害事象による中止率は12mgで11.3%、プラセボ4.9%で、受容体の数だけで続けやすさは判断できません。
消化器症状と、治療をやめた人の割合
消化器症状は、主に薬の量を少しずつ増やす「漸増期」に起こりました。大半は一時的で軽度〜中等度でしたが、治療をやめた人もいます。「症状は軽かった」と聞いても、ご自身が無理なく続けられるかは別の問題です。私は症状の程度と、食事や仕事への影響を聞きながら用量を判断します(出典5、6)。
| 試験・期間 | 項目 | 4mg | 9mg | 12mg | プラセボ | 出典番号 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| TRIUMPH-1・80週 | 悪心 | 28.6% | 38.4% | 42.4% | 14.8% | 5 |
| TRIUMPH-1・80週 | 下痢 | 25.2% | 34.1% | 32.0% | 13.5% | 5 |
| TRIUMPH-1・80週 | 便秘 | 23.8% | 25.9% | 26.1% | 10.9% | 5 |
| TRIUMPH-1・80週 | 嘔吐 | 10.6% | 22.8% | 25.3% | 4.8% | 5 |
| TRIUMPH-1・80週 | 有害事象による中止 | 4.1% | 6.9% | 11.3% | 4.9% | 5 |
| TRIUMPH-1・80週 | 皮膚感覚異常 | 5.1% | 12.3% | 12.5% | 0.9% | 5 |
| TRIUMPH-2・80週 | 有害事象による中止 | 3.8% | 11.6% | 7.7% | 4.9% | 8 |
| TRIUMPH-3・80週 | 有害事象による中止 | — | 9.8% | 13.5% | 4.8% | 8 |
| TRANSCEND-T2D-1・40週 | 有害事象による中止 | 2.2% | 4.5% | 5.1% | 0.0% | 11 |
| TRANSCEND-T2D-1・40週 | 悪心 | 16.4% | 19.5% | 26.5% | 3.7% | 11 |
(スマートフォンでは表を横にスクロールできます)
凡例:表の「有害事象」は、薬が原因かどうかを問わず、治療中に起きた好ましくない症状などをすべて数えたものです。数値は会社の公表資料によります。悪心は吐き気のことです。 表注:TRIUMPH-2の有害事象による中止率は9mgが最高で、用量の順に高くなったわけではありません。
TRIUMPH-1では、12mgで約9人に1人に当たる11.3%が、有害事象のために治療をやめています。プラセボでも約20人に1人、4.9%が中止しました。どちらにも中止した人がいるため、薬を使った人の中止率だけで症状の原因を決めず、比較相手も含めて判断します(出典5、8)。
皮膚感覚異常と低血圧
皮膚感覚異常とは、皮膚が焼けるように感じる灼熱感などの症状で、TRIUMPH-1の12mgでは12.5%、約8人に1人、プラセボでは0.9%に見られました。概ね軽度〜中等度で、多くは投与を続けている間に消えています。第2相でも皮膚の過敏などが7%対プラセボ1%に見られ、重度・重篤な症状や中止はなく、第3相で初めて現れた症状ではありませんでした(出典4、5、6)。
血圧を下げる薬を使っている方は、薬の名前と量を診察で伝えてください。TRIUMPH-1では低血圧・起立性低血圧・血圧低下が、4mg・9mg・12mgで2.7%・5.3%・8.8%、プラセボ0.9%に見られました。血圧の薬を使う人に多かった症状です。当院でも、肥満症でゼップバウンドを検討するときは、診察で血圧と併用薬を確認します(出典6)。
心拍数、不整脈、心血管イベント
心拍数は用量が多いほど増える傾向があり、第2相では24週、TRIUMPH-1の9mg・12mgでは20週をピークに、その後は下がりました。第2相の2023年の報告で、研究者はグルカゴンとGLP-1の心拍数上昇作用に触れ、増加はGLP-1受容体作動薬と同程度と評価しています。参考として米国添付文書ではゼップバウンド+1〜3 bpm、マンジャロ+2〜4 bpmとされていますが、これらはレタトルチドの値ではなく、既存薬で報告された変化です(出典4、6、30)。
不整脈などの割合だけで、心臓への長期的な安全性まで判断することはできません。TRIUMPH-1の重度または重篤な不整脈・伝導障害は、4mg・9mg・12mgで0.2%・0.7%・0.9%、プラセボ0.9%でした。2026年の報告でも、研究者はこの試験だけでは心臓への安全性の結論を出せないとしています。長く使う際の判断には、心血管への影響を目的に調べる試験の結果が要ります(出典6)。
TRIUMPH-3では、心血管イベントに統計的な差があるとは言えませんでした。MACE-5(心筋梗塞などの心血管イベントの指標)のハザード比は0.82、95%信頼区間は0.55〜1.22です。ハザード比は経過中の起こりやすさを比べた値で、推定の幅である信頼区間は「差がない」を表す1をまたいでいます。心臓・血管と腎臓への影響を調べるTRIUMPH-OUTCOMESは2029年2月に主要評価完了予定で、減量とは別に、こうした病気を減らせるかを調べます(出典8、16)。
膵炎、胆嚢の事象、死亡例の報告
膵炎については、報告された例数が少なく、薬との関係を結論づける段階ではありません。TRIUMPH-1の4mg・9mg・12mgで、膵炎は順に1例、3例、4例、プラセボでは2例でした。胆嚢・胆道の重度または重篤な事象は、同じ順に10例、5例、4例で、プラセボでは4例です。甲状腺髄様癌・C細胞過形成と薬剤性肝障害は0でした。まれな症状ほど、今回の件数だけで判断せず、その後の報告も合わせて検討します(出典6)。
死亡例は、人数に加えて原因と薬との関係を分けて確認します。TRIUMPH-1ではレタトルチド群で4例が報告されました。9mg群の3例は交通事故1例と突然死2例で、突然死は非心血管1例・原因不明1例と判定されています。12mg群の1例は、心不全の既往がある人が投与中止から189日後に心血管の原因で亡くなったものでした。プラセボ群の2例は交通事故1例・銃創1例です。独立判定委員会が原因を判定していますが、薬との因果関係の評価は示されていないため、死亡数だけから薬が原因と決めつけずに確認します(出典6)。
ほかの試験の死亡例では、治験薬との関係も評価されています。TRIUMPH-2の論文抄録では、4mg群2例・9mg群3例・12mg群1例・プラセボ群1例が報告され、治験責任医師は全例を治験介入と無関係と判断しました。TRANSCEND-T2D-1の論文でも、死亡2例はいずれも4mg群で、治験薬と無関係との評価です。治療中に起きたという事実だけで、薬が原因だったとは判断しません(出典9、12)。
チルゼパチドの添付文書にある注意との関係
レタトルチドは申請前で、添付文書や警告の内容はまだ分かりません。同じインクレチン系の承認薬であるチルゼパチド(マンジャロ/ゼップバウンド)の注意を知ると、診察でどんな点を確認する薬かが分かります。米国の添付文書では、甲状腺C細胞腫瘍を枠付き警告として挙げています。ラットで見られた腫瘍で、人でも起こるかは不明です(出典30)。日本のマンジャロ添付文書には「警告」の欄がなく、この所見は「その他の注意(非臨床試験に基づく情報)」に載っています。同じ所見でも国によって載る場所が違うため、警告の有無だけで危険度を判断しません。
日本のマンジャロ添付文書にも、低血糖・急性膵炎・胆嚢炎等・アナフィラキシー(重いアレルギー反応)・イレウス(腸閉塞)への注意があります。全身麻酔や深い鎮静を受けた人では、絶食後も胃に内容物が残り、気管に入り込む「誤嚥」を起こした例も報告されています。一律に何日休薬するという決まりはないため、手術や内視鏡の予定がある方は、使っている薬を担当医と麻酔科に伝えて、対応を相談してください(出典31、32)。
一方、レタトルチドそのものについて分かっているのは、前述のTRIUMPH-1などで報告された症状です。膵炎は少数で結論が出せず、甲状腺髄様癌や薬剤性肝障害は報告されていませんでした。TRANSCEND-T2D-1でも重症低血糖は0です。会社は有害事象の種類を、他のインクレチン系の試験と概ね一致すると説明しています。既存薬の注意を手がかりにしながら、レタトルチドの安全性は、この薬を使った人の結果を基に評価します(出典5、6、12)。
続けられる用量を、医師が判断する
当院では既往歴・併用薬・体質を確認して承認薬を少量から始め、症状が残れば私が増量の見送りや減量を判断し、漢方の併用でも支えます。安全に治療を続けるため、マンジャロの副作用への対応に沿って量や治療内容を一緒に考え、必要時はオンライン診療から対面診療や血液検査へ切り替える方針です。症状がある方は、出始めた時期を診察で伝えてください。
6. 投与法:週1回の皮下注射と段階的な増量
試験では週1回の皮下注射を2mgから始め、維持用量4mg・9mg・12mgへ段階的に増やします。
少量から始めるのは、消化器症状を抑えながら治療を続けるためです。レタトルチドは自分で注射する薬として開発されており、第2相では4mg開始より2mg開始の方が消化器症状は軽く、第3相はいずれも2mgから始めています。その後に続ける量を維持用量と呼び、TRIUMPH-3・4では9mg・12mgを調べました。今の薬で増量を迷っている方も、効果だけでなく症状を見ながら量を決める点は共通です(出典4、8、10、11)。
| 段階 | 内容 |
|---|---|
| 開始 | 2mgから投与を始める。 |
| 漸増 | 低用量から段階的に増やし、副作用があれば増量を見送る、または減量する。 |
| 維持 | 試験で定めた4mg・9mg・12mgなどの維持用量で評価する。 |
(スマートフォンでは表を横にスクロールできます)
試験の最高用量は、全員が目指す量ではありません。日本では承認された製品としての流通がなく、上の手順で使える段階には至っていません。ここでは、試験でも症状に合わせて増量を見送ったり減量したりしている点を押さえておくとよいでしょう(出典6、28)。
7. ウゴービ・マンジャロ・ゼップバウンドと何が違う?今の病状に合う薬の選び方
ここで比べる薬のうち、日本で承認されているのはウゴービ・マンジャロ・ゼップバウンドです。マンジャロは2型糖尿病、ウゴービとゼップバウンドは肥満症の適応を持ちます。
薬を比べたい方は、まずご自身の病気がその薬の対象かを確認します。表の減量幅は別々の試験で調べた値なので、大きい順に並べても薬の優劣にはなりません。表では、まず「日本の承認状況」の欄で、ご自身の病気に適応がある薬を探してください。
| 薬 | 成分・作用する受容体 | 投与 | 日本の承認状況 | 代表値(試験名・週・推定量) |
|---|---|---|---|---|
| ウゴービ | セマグルチド・GLP-1 | 週1回皮下注射 | 肥満症で承認 | STEP 6・68週・2.4mg・ITT解析:−13.2%、プラセボ−2.1% |
| マンジャロ | チルゼパチド・GIP/GLP-1 | 週1回皮下注射 | 2型糖尿病で承認 | —(2型糖尿病の薬のため体重の代表値は示さない) |
| ゼップバウンド | チルゼパチド・GIP/GLP-1 | 週1回皮下注射 | 肥満症、中等症以上の閉塞性睡眠時無呼吸症候群(BMI27以上)で承認 | SURMOUNT-J・72週・15mg:−22.7%、プラセボ−1.7% |
| レタトルチド | GIP/GLP-1/グルカゴン | 週1回皮下注射 | 日本未承認、米国は2027年第1四半期に申請予定 | TRIUMPH-1・80週・12mg・計画どおり続けた場合の推定:−28.3%、プラセボ−2.2% |
| カグリセマ | カグリリンチド2.4mg+セマグルチド2.4mg・アミリン系/GLP-1 | 週1回皮下注射 | 日本未承認、米国は2025年12月18日に申請済み | 解説記事を参照 |
(スマートフォンでは表を横にスクロールできます)
出典:5、18、19、20、25。
カグリセマと次世代候補の詳細は、カグリセマの成分・効果と開発状況の解説にまとめています。飲み薬のGLP-1については、経口GLP-1のオルフォルグリプロンの記事で確認できます。注射か飲み薬かだけでなく、成分と開発状況を比べる際の参考になります。
肥満症の方には、同じ会社の承認薬チルゼパチド(ゼップバウンド)という、今の診療で医師に相談できる選択肢があります。診療の流れとフォロー体制は、次のページで確認できます。
8. いつ使える?米国と日本の開発・承認状況
米国の申請はまだ提出されておらず、会社公表の提出予定は2027年第1四半期です。日本の承認申請は公表されておらず、肥満症・2型糖尿病の第3相は国内にありません。
8-1. 米国:会社が示す提出予定と、現在の状態
会社が示しているのは、承認される時期ではなく、申請を提出する予定です。2026年7月23日にFDAへのBLAを2027年第1四半期に提出すると発表し、8月5日の決算資料と9月29日のリリースでも同じ予定を示しました。対象は肥満症・膝変形性関節症の痛み・閉塞性睡眠時無呼吸で、2型糖尿病での申請予定は公表されていません。目標判定日は申請してから決まるので、今の時点ではまだ存在せず、前倒しや優先審査の公表もありません。使える時期が気になる方は、提出予定の発表で承認日を見込まず、申請後の審査の進み方を確認してください(出典8、27、29)。
2026年10月4日時点で、米国への申請提出とFDAの判断は、いずれも公表されていません。
8-2. 日本:確認できる第3相はMASLDが対象
2026年10月4日の確認では、日本におけるレタトルチドの承認申請の公表はありません。
国内で進んでいるのは、脂肪肝であるMASLDを対象にした試験です。PMDAの2026年9月30日更新情報(8月31日までの届出)で確認できる第Ⅲ相は、この1件だけでした。2025年9月29日に届け出られ、2030年10月31日まで続く予定で、jRCT2021250031には国内65施設が登録され、参加者を募っています。国内で進む開発は、今のところこの肝臓の病気が中心です。
肥満症・2型糖尿病の第Ⅲ相は届け出られておらず、TRIUMPH・TRANSCENDにも日本の施設はありません。日本人を対象にした試験には、このほか2型糖尿病64人の第1相があり、2022年に完了しています。登録番号はjRCT2051210029で、日本人で調べた病気と試験の段階を確認できます(出典21、22、23、24)。
治験を考える方が参加できるかどうかは、実施医療機関が対象条件に沿って判断します(出典21、22、24)。
日本の承認・発売時期は、今の公表情報では分かりません。日本イーライリリーの2026年3月31日現在の開発品一覧でも、レタトルチドはMASLDの開発後期だけです。対してオルフォルグリプロンには、肥満症・2型糖尿病の第3相の届出が複数あります。薬によって国内開発の進み方が異なるので、ほかの薬と同じ時期に使えると考えず、それぞれの申請状況を確認します(出典21、33、36)。
下の表は、既存薬で承認から発売までにどのような段階を経たかを示す実例です。元の資料に申請・審査の日付は示されておらず、この期間からレタトルチドの発売日を予測するものではありません。承認と発売は別の日だった、という点を確認するための表です。
| 段階 | ゼップバウンドの実例 | マンジャロの実例 |
|---|---|---|
| 承認 | 2024年12月27日 | 2022年9月26日 |
| 薬価収載 | 2025年3月19日 | 2023年3月15日 |
| 発売 | 2025年4月11日 | 2023年4月18日 |
(スマートフォンでは表を横にスクロールできます)
出典:18、19。
8-3. 今後、確認したい試験結果
今後は、既存薬と直接比べた結果と、長期的な病気への影響に注目します。TRIUMPH-5はチルゼパチドと比べる試験で、2026年11月に主要評価完了予定です。TRANSCEND-T2D-2はセマグルチドと80週のHbA1cを比べ、2026年8月27日に主要評価を完了しましたが、結果はまだ公表されていません。心臓・血管と腎臓への影響を調べるTRIUMPH-OUTCOMESは2029年2月、MASLDのSYNERGY-Outcomesは2030年8月に主要評価完了予定です(出典15、16、17、34)。

9. レタトルチドを待つべきか?糖尿病専門医としての考え
私は、レタトルチドを誰にでも優先する薬とは考えていません。今の体重・血糖・副作用・続けやすさから、その人に合う治療を判断します。
レタトルチドを待つべきか
私は、新薬を待つためだけに治療を先送りしません。国内の開発や申請の段階を踏まえると、日本で使えるまでにはまだ道のりがある薬です。マンジャロで体重が停滞している方も、血糖が改善していれば、それは治療の成果です。承認を待つ間もその効果を生かし、今使える承認薬で血糖と体重の課題に取り組みます。
体重が停滞したとき
体重が停滞したときは、薬の量と生活の両方から、見直せる点を探します。診察ではマンジャロの現在の用量と併用薬を確認し、症状があれば、出始めた時期と投与・増量の前後関係を伺います。食事や運動は、仕事のある日にも続けられることや、難しいと感じる場面を挙げておくと話しやすくなります。できていない点だけでなく、続けてきた工夫も、生活に合う治療を考える手がかりです。
筋肉と生活習慣を置き去りにしない
減量中は、体重と一緒に筋肉まで減っていないかを見ていきます。診療でも、そのようなケースを繰り返し見てきました。GLP-1系の薬は生活改善を後押しするものと考え、タンパク質の確保と筋力トレーニングを一緒に進めます。当院のタンパク質の目安は体重1kgあたり1.0〜1.2gです。食事や運動が不十分なまま薬をやめると、筋肉が減った状態で体重が戻るサルコペニア肥満につながるため、減量している間から習慣を整えます。
レタトルチドでも、筋肉を含む除脂肪量が減ったと報告されています。2型糖尿病の第2相サブスタディでは、体重減少に占める除脂肪量の減少割合は、ほかの肥満治療と同程度と評価されました。この薬でも、体重の数字とともに何が減っているかを見ていきます(出典35)。
筋肉量を保ちながら脂肪を減らすことを目指して、抗体医薬品のビマグルマブが研究されていますが、日本では未承認です。ビマグルマブの仕組みと試験結果の解説では、筋肉量と筋力の違い、副作用や日本の開発状況、今できる治療も紹介しています。
肥満症は、糖尿病・脂肪肝・心血管疾患・睡眠時無呼吸につながる慢性の病気です。短期間の減量だけで診療を終えず、体重と血糖の経過を見ながら、栄養・運動・睡眠・気持ちの負担まで伺います。薬を続ける間も、その後も、無理なく続く生活習慣を一緒に考えます。
個人輸入・海外品を勧めない理由
私はレタトルチドの個人輸入を勧めません。日本人の長期安全性データは限られ、個人輸入品は副作用被害救済制度の対象外です。海外通販では偽造品のリスクもあり、個人輸入という入手経路だけでは、開始前の病状の見極めや異変時の診療体制は確保されません。薬を始める前に病状を確かめ、異変があれば診察や血液検査につなげるところまで含めて、治療を考えます。
開発元は、世界に承認製品はなく治験参加者以外は合法的に入手できないと説明し、2026年8月12日に米国の販売事業者6社を新たに提訴しました。同社が引用するFDAの説明では、未承認品の消費者への販売は違法で合法的な調剤もできず、研究用品の品質は不明です。海外で売られているだけでは、承認された製品だと判断する根拠にはなりません。私は今の病状に合う国内の承認薬で治療を進めます(出典28)。
当院で治療を判断するときに見ること
診察では、今の治療で得られた効果と、無理なく続けられるかを基に目標を決めます。使っている薬、体重・血糖の経過、困っている症状が判断の材料です。当院では2023年4月以降、マンジャロ(チルゼパチド)の処方実績が1,000例以上あります。日本東洋医学会にも所属する私が、副作用には漢方の併用でも対応します。全国対応のオンライン診療から、必要に応じて対面診療や血液検査へ切り替えながら、経過を見ていく体制です。
10. レタトルチドについてよくある質問
レタトルチドは日本未承認・米国未申請で、会社は米国での申請提出を2027年第1四半期に予定しています。
今の薬を続けるか迷っている方は、ご自身が気になっている点から確認できます。
Q1. レタトルチドは日本で承認されていますか?
日本では承認されておらず、国内申請の公表もありません。PMDAで確認できる第Ⅲ相の届出はMASLDが対象で、肥満症・2型糖尿病の国内第Ⅲ相は確認できません(出典21、36)。
Q2. いつ日本で使えるようになりますか?
日本で使える時期は決まっておらず、国内申請の公表もありません。米国も申請前で、開発元は2027年第1四半期の提出を予定しています。FDAの目標判定日はまだなく、現時点の公表情報からは日本の承認・発売時期を判断できません(出典21、29、36)。
Q3. マンジャロ・ゼップバウンドとの違いは何ですか?
マンジャロとゼップバウンドの成分は、GIP・GLP-1に働くチルゼパチドです。日本ではマンジャロが2型糖尿病、ゼップバウンドが肥満症などの適応を持ちます。レタトルチドはグルカゴンにも働く別成分なので、今の薬の用量をそのまま置き換えて使う関係にはありません(出典1、18、19)。
Q4. カグリセマとの違いは?
レタトルチドは単一の分子が受容体に働く三重作動薬です(出典1)。カグリセマはアミリン系とGLP-1の2成分配合で、米国では2025年12月18日に申請済みです。レタトルチドは米国で申請前の段階にあります(出典29)。詳しくはカグリセマの解説記事で成分と開発状況を確認できます。
Q5. 読み方・表記は?
retatrutideは「レタトルチド」と読み、開発コードはLY3437943です。三重作動薬はトリプルアゴニストとも呼び、トリプルGは俗称です。製品名はまだ公表されていません(出典1、28)。
Q6. レタトルチドを待つべきですか?今、何をすればよいですか?
私は、レタトルチドを待つためだけに治療を先送りせず、今使える承認薬で治療を進めます。受診前に薬の名前と用量、体重・血糖の経過、症状が出た時期をまとめておくと、見直す点を相談しやすくなります。食事や運動で難しい点も診察で伺います。TRIUMPH-2やTRANSCEND-T2D-1は、マンジャロから乗り換えた効果を調べた試験ではありません。新薬の平均値だけで今の治療を評価し直さず、ご自身の経過を基に判断します(出典9、12、37)。
Q7. マンジャロより効く薬なのでしょうか?
チルゼパチドと直接比べるTRIUMPH-5の結果は未公表で、優劣はまだ決められません。主要評価完了予定は2026年11月です。TRIUMPH-1とSURMOUNT-1の減量幅は対象・期間・推定量が異なり、その差を乗り換え後の効果として使えません(出典5、15、26)。
Q8. 副作用はきついですか?
消化器症状で続けられなかった人もいます。TRIUMPH-1では、12mgで11.3%、約9人に1人が有害事象のために中止し、プラセボでも4.9%、約20人に1人がやめました。これは有害事象全体について数えた中止の割合です。消化器症状は主に増量期に見られ、軽度〜中等度が大半でしたが、つらさに応じて用量を調整する視点も欠かせません(出典5)。
Q9. 心臓に悪い薬ですか?
心拍数の増加は報告されていますが、心臓への長期的な安全性の結論は出ていません。TRIUMPH-1の論文でも、この試験だけでは心臓への安全性を結論づけられないとしています。TRIUMPH-3のMACE-5もハザード比0.82の信頼区間が1をまたぎ、心血管イベントを減らす効果は示されませんでした。TRIUMPH-OUTCOMESは2029年2月に主要評価完了予定で、長期的な影響はこのような試験で調べます(出典6、8、16)。
Q10. 筋肉も減りますか?
筋肉を含む除脂肪量が減ったと報告されています。2型糖尿病の第2相サブスタディでは、体重減少に占める除脂肪量の減少割合は、ほかの肥満治療と同程度と評価されました。レタトルチドについて分かっているのは、この研究で調べた範囲です(出典35)。診療では、減量と一緒にタンパク質の確保と筋力トレーニングを進めます。
Q11. 注射は週に何回ですか?
試験では週1回の皮下注射です。第3相は2mgから段階的に増量し、4mg・9mg・12mgなどの維持用量で評価しています。症状に応じた増量の見送りや減量も試験で認められており、最高用量を全員の目標とするものではありません(出典6、8、10、11)。
Q12. 2型糖尿病がある人も対象ですか?
TRIUMPH-2とTRANSCEND-T2D-1では2型糖尿病の人を対象に、体重とHbA1cを調べています。研究対象に含まれることと承認される適応は別で、開発元は2型糖尿病での米国申請予定を公表していません(出典8、9、11、12、29)。
Q13. 承認されたらすぐ日本で使えますか?
承認日と発売日は別です。国内の実例では承認、薬価収載、発売の順に進みます。ゼップバウンドは2024年12月27日に承認、2025年3月19日に薬価収載、2025年4月11日に発売されました。この実例だけでは、レタトルチドの日本での承認・発売時期は判断できません(出典18、19)。
Q14. 個人輸入やネット購入で使えますか?
個人輸入やネット購入は勧めません。開発元は世界に承認製品はなく、治験参加者以外は合法的に入手できないと説明しています。同社が引用するFDAの説明でも未承認品の販売は違法とされています(出典28)。個人輸入品は副作用被害救済制度の対象外で、偽造品のリスクも排除できません。
11. まとめ:今の体重と血糖から、次の診療につなげる
レタトルチドは三重作動薬です。チルゼパチドとの直接比較(TRIUMPH-5)の結果は公表されておらず、日本の承認申請も公表されていません。私は新薬を待つためだけに治療を先送りせず、今の承認薬の効果と続けやすさを確認します。
体重が停滞している方も、次の診察で見直せる点があります。薬の量や症状、生活の変化を記録しておくと、限られた診察時間でも具体的に話せます。
- □ 今使っている薬の名前と用量をまとめた
- □ 体重と血糖がどう変化してきたかを確認した
- □ 困っている症状と、出始めた時期を記録した
- □ 食事・運動で続けられることと難しいことを整理した
- □ 新しい薬について知りたいことをまとめた
治療の選択や変更は、効果と副作用の出方を診察で確認しながら医師と相談して決めます。
当院の全国対応のオンライン診療では、糖尿病専門医が経過と治療目標を確認します。2023年4月以降のマンジャロ処方実績1,000例以上を踏まえ、漢方の併用で副作用を支え、必要時は対面診療や血液検査につなげる体制です。マンジャロオンライン診療の流れとフォロー体制を確認したうえで、今の治療を続けるか、見直すかを相談できます。
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監修者

小林 正敬(こばやし まさたか)|まさぼ内科・糖尿病クリニック飯田橋院(東京・飯田橋/糖尿病内科・代謝内分泌内科・内科)代表理事兼院長。日本糖尿病学会 糖尿病専門医(第06341号)、日本内科学会 総合内科専門医(第022910号)、日本糖尿病協会療養指導医、日本東洋医学会所属。糖尿病・代謝・内分泌を専門とし、GLP-1/GIP受容体作動薬を用いた治療と漢方診療に対応しています。院長紹介はこちら (監修日:2026年10月4日)
関連ページ
参考・出典
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- Jastreboff AM et al., N Engl J Med 2023;389(6):514-526, PMID 37366315。肥満の第2相試験
- Eli Lilly, 2026-05-21。TRIUMPH-1の企業リリース
- Jastreboff AM et al., N Engl J Med 2026、2026年9月29日オンライン先行、DOI 10.1056/NEJMoa2604169、PMID 42814954。TRIUMPH-1論文・Table 3と脚注
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- DailyMed、米国添付文書。Zepbound/Mounjaro。枠付き警告・心拍数の記載。
- 日本イーライリリー/田辺ファーマ、マンジャロ添付文書、2026年9月改訂。JAPIC掲載(正本はPMDA 医療用医薬品情報検索)、重大な副作用・全身麻酔又は深い鎮静下の患者への注意。
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